前回「いのちの林檎」について書いたが、他にも思ったことがあるので書く。映画の中で「奇跡のリンゴ」の木村さんはリンゴの木一本一本に話しかける。「大丈夫か?」とか「がんばってくれてるな。」などと言いながら必要のない枝を切り落としたりする。そしてリンゴの木一本一本に「ありがとう」と声をかけている。
 木村さんは言う。リンゴは人間が作っているんじゃない。リンゴの木が自らリンゴを作っているのだと。人間はただそのお手伝いをしているだけだと。

 実は僕もみかん作りを始めてそう思うのだ。みかんは人間が作っているのではない。みかんの木が大地から水分を吸い上げ、光をエネルギーと変え育っていくのだと。そして人間はそれらのお手伝いをしているだけであると。
 僕はみかんの木1本1本に意識があると思えて仕方がない。けれどもみかんの木は一つの生命でありながら、葉や枝はそれぞれに働いていると思うのだ。それは人間で言うなら髪の毛や爪のようなところがあると思うのだ。つまり髪の毛や爪は人間が意識してのびるのではなく、自然とのびてくる。だから途中途中で切るという行為をしなければならない。同じようにみかんの葉や枝も成長を求めて自然に伸びていく。しかしながら一本の木全体から見ると、それは最適とは言えない状態となっていく。しかしみかんの木だけではそれをどうすることもできない。そこで初めて人間が手を貸す必要が出てくるのだ。その木にとって快適な状態にするという、木のお手伝いをするのだ。
 また木には意識があるので、「ありがとう」という言葉にも反応する。お礼を言われて木も気をよくして、「がんばろうか。」って思うのだ。そしておいしいみかんを作ろうと思ってくれるのだ。もしこれが不平不満ばかりみかんに言っているとその果実はきっと甘みの少ない、酸っぱいだけのみかんとなるに違いない。

 土がみかんの根幹を育てる。もっと言えば、その土の中の微生物たちがみかんの根っこを刺激し、根っこを延ばさせる。その土はミミズなどに加え、微生物たちが柔らかくし、根っこを伸ばしやすい状態にする。それは木村さんが発見した(気がついた)山の土の柔らかさである。
 そして太陽の光が、みかんの葉っぱの葉緑素と光合成をし、エネルギーに変える。大地の力と天の力。そのふたつの力が合わさり、みかんは育っていくのだ。そこに人間がより快適な状態となるよう手伝いをする。これがみかん栽培の循環システムだと思う。

 しかしながらそこに化学肥料が入って来る。微生物はそれが直接体に当たるので、その土の微生物は死んでしまう。するとみかんの根っこは水分と共にその化学肥料を吸収するが、それはある意味異物である。そして必要以上に吸収されていく。だから虫がつくのだ。自然はあくまでも循環システムを守ろうとする作用が働くだけなのだ。
 これが有機肥料の場合、それはみかんの木に吸収されるのではなく、微生物の餌となる。だから微生物が増え増えていき、土を柔らかくする。そしてその微生物が根を刺激し、根は伸びると同時に、水分を吸い上げようとする。
 もちろん有機肥料が過多の場合は循環にステムに狂いが生じ、そのためもとにもどそうとする自然の作用が発生する。すなはち異常が発生する。
僕なりの推測である。

 実はこれはみかんだけでなく、リンゴもそうだし、楠、杉などの木々もそうであるし、植物すべてに言えることである。

 僕は不思議に思えて仕方ない光景がある。それは公園にある、桜、梅、、楠、イチョウなどの木々である。人々は木々の葉っぱが落ちるたびに、掃除をする。そして一年を通して地面はいつもきれいな状態となっている。
 にもかかわらず、その木々は毎年花を咲かせ、葉を茂らせ、実をならし、そしてまた葉を落とす。肥料をやるわけでなく、落ち葉が肥料となるわけでなく、ただ雨水を吸い上げ、光と光合成をするだけで、花も葉も実も作りだすし、成長もするのだ。これが山の木なら土には栄養がたっぷりだろうから理解できる。けれども人々により踏み固められた固い土で、掃き清められ、草は抜かれ、肥料が与えられるわけでもないのに、きちんと成長のサイクルを繰り返していく。それならば木が必要としているのは水と光だけとなる。木・花・葉を形成している成分はどこから生まれるのだろう??? 観葉植物にしてもそうだ。僕の部屋にある観葉植物は、水しか与えていないのにもかかわらず新しい葉が出てきて成長していく。鉢植えという限られた空間の中に根を生やしているにも関わらずだ。

 最後に観葉植物が出たついでに余談として、映画の化学物質に関してだが、僕は歯磨きする洗面所に観葉植物を置いている。歯を磨いている時に、観葉植物の葉っぱに歯磨き粉が飛んでしまうことがある。するとその歯磨き粉がついた部分は茶色くなる。そして一部の葉は枯れていく。そんなものを僕たちは歯をきれいにするといって使用しているのだ。その事実を知ってから僕は歯磨きあとのうがいだけはしっかりするようにした。



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