天気が良いので、久々に自転車で海辺をずっと走ろうと思い、小さめのバックパックを背負い愛チャリⅡ号で出かける。

 久々の道を通ると、いつの間にやら老人施設(有料老人ホーム)が建てられている。それにしても今やあっちにもこっちにも老人ホームやら、高齢者専用マンションやらが建ち並ぶ。今や完全に不動産会社も建築会社もこの分野に全力投資って感じだな。ホント日本は高齢者だらけやな…。

 ところで以前から思っているのだが、高齢者介護産業って実は何の生産性もないのではないかと思っているのだがどうなんだろう。入居者の貯金を喰い尽くしていく一方ではないかと思っているのだが、日本の貯金は大抵が高齢者が持っているもの。それが喰い尽くされていくのでは、と思うのだが。

 まあ、お金の循環になるのならばと思いもするが、介護の現場で働いている人達は低賃金であり、貯金する余裕もほとんどなく、日本のお金は宗主国の米の国に吸い取られていく。やがてこの国は本当にお金がなくなってしまうのではと心配したりもする。

 そしてチャリンコは快適にすすみ、海辺まで出ると、そこには穏やかな瀬戸内海が青空と実によくマッチングしており、秋の穏やかな天気と掛けあわされ、気持ちよさはその2乗、3乗へとなる。

 いや、それにしても瀬戸内海は気持がいい。気持よすぎる。ホントこんないい所ないよ。ここに住めていることに感謝だ。今はアオリイカのシーズンなのか、海岸線沿いでルアーを投げる人々がポツポツいる。

 そんな気持ちのよさの中を走っていると、後輪のタイヤがずるっと一瞬ずれた。なんかいやな感じがしたと思い、自転車を降りてタイヤを触ってみると、空気が抜けている!

 パンクや!家を出る前にタイヤに空気を入れてきたから間違いない。おまけに空気が抜ける音もする。あらら…。

 家から約10キロ地点で撃沈。自転車屋さんは近くになさそうだし、あっても今日は日曜日。休みの所も多いだろう。ということで、天気もいいことだし愛チャリⅡ号を押しながら歩いて帰ることにした。運動不足解消にもなるし!こんなことで気持を沈ませても仕方がない。

 歩きながら帰っていると、ちょうどルートが遍路道でもあったこともあり、5、6人のお遍路さんと出会う。「こんにちは。」の挨拶をしながら、すれ違うのだが、すれ違う人どの人も高齢者。みんな60は優に超えている。中には70代と思わしき、白いあごひげを生やし、2メートルはあろうかという杖をつきながら歩く、まるで仙人のような人もいた。

 年をとり介護施設に入居する人もいれば、四国の遍路道1200キロを歩く人もいる。それぞれがそれぞれの人生を背負っている。まあどちらかといえば生涯現役がいいのだろうけれど。僕なら間違いなく遍路道での野垂れ死にを選ぶだろうけれど…。

 自転車を押しながら歩いているからこそ、こうしてまたいろいろなことを考えているのだろうなと思うと、歩いているのも悪くはない。歩くことこそ人間の基本だし。師匠のサティシュ・クマールが現代人はまるで足がないようだと言っているし。ついでに歩き始めた瞬間から、家に帰って自分でパンクを直そうと思っている。

 僕は最近“百姓”になりたいと本気で思っている。百姓とは百の仕事をこなすから百姓といわれることもあるように、さまざまな事を自分でこなす。現在の分業の時代。何でもかんでも誰か(専門家)に頼まなくちゃならない時代にはどうも疑問符や。それよりも少々下手でも自分で楽しみながらやっていきたい。それが僕の望み。だからパンクも自分で直すのだ。

 国道を歩けば、そこは(足のない人達が運転する)車がジャンジャン走っているけれど、ひとつ中に入り、農道の細道を歩けば、稲刈り中の風景もあれば、川辺で亀が日向ぼっこをしていたりもする。歩くからこそまた楽しめる風景がいっぱいだ。

 しかし今では稲刈りと同時に脱穀も終え、ついでにモミすりまで終えてしまうのだから、何とも便利というか、合理化されてしまった。日本の農業従事者のほとんどが60歳以上なのだから、それも仕方がないのかもしれない。けれども中には今でも刈った稲を天日干しにしているところもあり、こっちのお米を食べたいなと思うのは僕だけじゃないだろう。

 車に乗ってスポーツジムへ行き、ランニングマシーンに乗っかるよりも、こうして楽しみながら歩いたりする方がよほどいいような気もするのだが、この街にも今やスポーツクラブも溢れている。

 お金のある人は、お金を支払って人が作りだし提供するサービスを受ける。お金のない人は自分なりの工夫をして、楽しさを見つける。これまたそれぞれだ。少なくともこの20年間の僕は後者であり、きっとこの先も後者であり続けるだろう。

 かつて20代後半時にバックパッカーとして海外を放浪していた時、この先海外に出るときは、安宿に泊まり渡るのではなく、きちんとしたホテルに泊まる身分となっていようと考えもしたのだが、どうもそのようになることはなさそうだ。というよりも、そもそも海外に行こうという気がほとんどゼロなのだが。

 日本が一番いいのだ。

 そしてこの国の人々が意識を変えて本当に力を発揮したら、あっという間に世界は変わるのだ。神国日本。神州日本。いつ立ち上がる?

 そんなことを考えながら歩いているうちに、約10キロの道のりを歩き終え、家にたどり着いた。そしてパンクも修理した。2度目のパンク修理なので、かなり早く修理完了。これで再び明日から愛チャリⅡ号は頑張れる!

 いい1日だ。