いよかんシーズンが終了した。すべてを出荷し終わり、納屋は空っぽの木箱が積み上げられているだけとなった。夢のいよかんを目指し始めて2シーズン目。結果は・・・「惨敗!」。全くもって納得のいかないモノとなった。

 スッパイ!味がまちまち。そして・・・。

 僕の掲げた目標は「安全・安心そして元気の出るみかん」。それはもちろん無農薬、無化学肥料による栽培。なのでそれまでいわれるままにやっていた農薬散布を昨シーズンからやめた。(ただし何故か農薬に分類される木酢は使った。)代わりにえひめA1という微生物の散布を始めた。そして化成肥料も止め有機肥料だけにした。

 「奇跡のリンゴ」として有名な青森の木村秋則さんが作る自然栽培のリンゴは腐らない。日が経つにつれ萎れていくのみ。そして自然の一部へと帰っていく。それが本当なのだ。野菜だってそう。本当は腐らない。いわゆる雑草が腐っていくのを見たことがない。萎れ乾燥し分解され、やがては自然へと帰っていく。

 そして我がいよかん。残念ながら腐る。それを見たとたんにがっくりしてしまった。でも原因はなんとなくわかる。肥料がいけない。有機肥料とはいえ、納得できていない。そして微生物の散布量。これもまだまだ研究が必要だ。(本当は肥料も微生物散布も止めたいのだが、今の段階ではそうすると木が枯れてしまう。)

 先日友人に紹介してもらったみかん農家の人を尋ねた。その人のつくるみかんは「化学物質過敏症」の人でも食べられるので、仲介人を通してその人達に出荷しているそうだ。それは僕のひとつの目標「安全・安心」。

 以前化学物質過敏症の人のドキュメンタリー映画を見た。その人は家の中にいても、道をタバコを吸いながら通る人がいるだけで反応し、発作を起こす。そんな彼女が安全な場所を求めて行きついた先は山の中。そこで麦を挽き、パンを焼き生活している。もちろん無農薬。そんな彼女がかつて発作で苦しむ中、命を蘇らせたのが木村さんのつくるリンゴだった。

 僕もそんなみかんがつくりたいと思った。

 さて、そのみかん農家の人が言うには「うちは夏場も水をやらない。一度でもやると、次から毎回やらなくてはならくなる。」とのこと。みかんも甘やかしは禁物だ。自ら根を張り水を吸うようにしなくてはいけない。残念ながら我が家は夏場に水をやる・・・。これからはアメとムチだな。人も植物も過保護は禁物だ。

 とまあ、しょげてしまうような状態ではあるが、希望もある。それはうちのみかん畑も共生空間になりつつあるということ。クモがいて、カエルがいて、バッタ、コウロギ、セミ、テントウムシetcいっぱいいる。そして昨年はヘビもいた!だから共生空間の中で育つみかんとはなっている。

 今年のいよかんは20個に1個は元気が出る。甘さと酸っぱさが絶妙のバランスを保ち、食べた瞬間に、「こりゃ元気になるわ!」って思える。来年は20個中2個は元気が出るようにしたい。その次は20個中3個、その次は20個中4個…。20年後にはすべてのみかんが元気が出るみかん。そして「安全・安心そして元気の出るみかん」が完成する。

 2シーズン目終了。まだまだ2シーズン目。全くのド素人の挑戦。まあその分消費者にとっては迷惑かな?それでも1年に1度の大勝負。1年かけての成果。

 やりがいはあるぞ~。

 誰もが安心して食べられる。それって本当は当たり前のこと。けれども世界は今やほとんどの人がロシアンルーレットのような食生活をしているのが現状。

 変えてやる!

 いつか我が家のいよかんを口に含んだ瞬間に笑顔となる人の姿を見てみたい。