「里山資本主義」藻谷浩介 NHK広島取材班 (角川Oneテーマ21)という本がある。その中に「52%、1.5年、39%の数字が語る事実」という項目があり、そこに出てくるのが以下のようなものである。

 52% … 発売から2年以内に消える商品の割合((社)中小企業研究所「製造業販売活動実態調査」2004)
 ちなみに1990年代まではこの数字は8%であり、9割以上の商品が発売後2年以上市場に残り続けていた。

 1.5年 … 新しく発売された商品が利益を得られる期間(経済産業省「研究開発促進税制の経済波及効果にかかる調査」2004年)
 1970年代は開発後25年ぐらいはもち、開発者は1つのヒット商品を生み出せば、定年までは喰っていくことができた。

 ちなみに
 39% … 仕事の満足度((独)労働政策研究所・研修機構 調査シリーズNO.51「従業員の意識と人材マネジメントの課題に関する調査」2007年)
とのことだ。

 この数字を見て大都市(大企業の中枢が置かれている)、大企業(電機メーカーなど)のの現状を考えた。多額の費用と人材を投入し何年もかけ新製品を開発してヒットを飛ばしたとしても、すぐに数多くの後発メーカーが追随しより安いものを出し、利益が得られなくなる。2年でその商品は消えていく。そして開発者達はまた次なる新しいものを要求される。

 例えば液晶テレビ。かつては「世界の亀山」と言われその名を轟かせていたのが、あっという間にメーカーの足かせとなる。稼ぎ頭だったものがすぐにアキレス腱となり、どうにもならないと思われればリストラという言葉が浮上する…。

 果たしてひとりの人間(部署)が次から次へと新しいものを開発できるだろうか。苦労して開発した製品がヒットして一時的に名声を得たとしても、あっという間に競争の波に飲み込まれ赤字となり、コストダウンを命じられるとともに、次なる新製品開発を迫られる。その後ろではリストラがちらつく…。これでは人も企業も疲弊していくのが当たり前だと思う。だから今ではかつての日本のフラッグシップ「ソニー」も「パナソニック」も息絶え絶え。

 それが今の大都市、大企業、そして世界共通品目の世界。苦労してエベレストに登ったとしても、そこにいられるのはほんのわずか。すぐに引きずり降ろされる。まるで足の引っ張り合い。グローバル経済は熾烈な競争社会。油断をすればあっという間に飲み込まれてしまう。更にその中の人々(+ポリティシャン)はあれこれと搾取の方法を考え出す。上記資料の数値は2004年時点だからそれから約10年たつ現在はもっとひどい数値となっているかもしれない。

 リストラ、プレッシャー、欲望、嫉妬etc人間のエゴが生み出した空間は今では多くの人間を苦しめる。そしてどこへ逃げようとお金という亡霊が付きまとう。壊しては作り、壊しては作りの繰り返しでお金を回さなければ成り立たない社会。都会の人々はそのような中に生きている。まさに過酷な弱肉強食世界。

 一方でそのような世界からもう降りようという思想がどんどん台頭してきている。それが里山資本主義。(地方の)地域の中で経済を循環させようとする。そこにはエベレストのような高い山はない。そこにあるのはせいぜい1,000メートルくらいまでの山であり、世界からすれば見えないようなもの。それらはGDPに乗っからないことも多い。けれどもそこには、その地域にしかないものがある。そしてその山や里を豊かにするものがある。それは世界を変えることはないけれど、地域の中で豊かさを循環させ、地域の人々がそれを享受する。もちろん外から来た人にもおすそ分け。外から来た人も楽しんで!

 都会(大企業の中)でしのぎを削って生きるか、それともそこから降りて循環型で生きるか。どちらをとるか。選択するのはあなた。




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