自然栽培のみかんづくりを目指して3年の月日が経つけれど、まだまだ理想のみかん畑からほど遠い。というよりもどんどん木が枯れてゆき、寂しくなる一方。このままではまもなくみかんの木が総入れ替えになるのではという不安も募る。一体いつになれば「安全・安心そして元気の出るみかん」ができることやら。
ともかく自然栽培で生命力のあるみかんを夢見ているのだが、先日読んだ本の中にそのヒントになるのではないかと思えるようなことが書かれていた。その本は渡邉格 著「田舎のパン屋が見つけた『腐る経済』」であり、「作物」と「菌」の「発酵」と「腐敗」について次のように書いていた。
自分の内なる力で育ち、強い生命力を備えた作物は「発酵」へと向かう。生命力の強いものは、「菌」によって分解される過程でも生命力を保ち、その状態でも生命を育む力を残している。だから、食べ物としても適している。
反対に、外から肥料を与えられて無理やり肥え太らされた生命力の乏しいものは「腐敗」へと向かう。生命力の弱いものは、「菌」分解の過程で生命力を失っていく。だから、食べ物としてはあまり適していない。
(中略)
「天然菌」は、作物の生命力の強さを見極めている。リトマス試験紙のように、生命の営みに沿った食べ物を選り分けて、自分の力で逞しく生きていけるものだけを「発酵」させ、生きる力のないものを「腐敗」させる。ある意味で「腐敗」とは、生命にとって不要なもの、あるいは不純なものを浄化するプロセスではないかと思うのだ。
現在僕が行っているのは、無農薬・(無化学肥料)でできるみかん。木酢を散布したり、炭や堆肥を与えたりしている。堆肥の量をだんだん少なくして、いずれは太陽の光と水でもって(美味しい)みかんができるだけのエネルギーを持つようにするために、土づくりに取り組んでいるのだが、なかなかうまくいかない。けれどもその土づくりのキーワードがこの「菌」だと思うのだ。
いい土にはいい菌がたくさんいる。だからその土は柔らかく、ホクホクで温かみがある。そんな風に思えるのだが、僕のところのみかん畑の土はまだ冷たい。これまで何十年も外から化学肥料を与えられ、生えてくる草はきれいに刈り取られ、そして農薬でもって消毒され、まるで無菌室の中で守られてきたみかんの木だから、急に外に出されても抵抗力ゼロ。更に土は化学物質の影響で冷たく固くなってしまっているのでその回復には時間がかかる。
菌(微生物)の住みやすい環境づくり。それが現在の一番の課題だ。奇跡のリンゴの木村秋則さんは無農薬のリンゴづくりに10年の歳月を費やした。ただ木村さんの場合は全くの手探り状態から始めた。けれども僕の場合はそれができるってことが(木村さんのお蔭で)分かっている。「土を育てる」ってことが大切であるってこと。なので10年はかからないような気もするのだが、付きっきりでみかんづくりをしていないのだから、それぐらい覚悟しておいた方がよいのかもしれない。
とにかくコツコツ続けるしかない。少しずつ少しずつ微生物を増やし、生きた土を作る。これに徹するしかない。そしていつか天然菌に負けない生命力の強いみかん(いよかん)を作りたい。放っておいても腐ることなく、しおれていくだけのみかん。そしてそれを食べた人が笑顔になる瞬間を見てみたい。僕の場合特に、化学物質過敏症の人が食べて笑顔になる瞬間が見てみたい。
人間の意識と自然のマッチング。そこに最高のコラボレーションが生まれるような気がする。地球はその力をよりよく発揮するために人間をこの地に住まわせている。人間の持つ能力、そして地球の持つ力。それらが化学反応(共生反応)を起こしたときに最高のものが生まれる。それをサポートする微生物たち。この仕組みを会得することができたならば、きっと黄金に輝くみかん(いよかん)ができる。
そんなみかんを作りたい。
なんだかいいよかんがする。
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