最初に言っておきますが、福祉の話です。

平野秀典さんの「GIFTの法則」というDVDをTSUTAYAでレンタルしました。平野秀典さんとは、感動を生み出す表現力を向上させる専門家で、感動プロデューサーという肩書を持った人です。平野さんは一部上場企業のビジネスマンの傍ら、「演劇」の舞台俳優として10年間活動し、その経験からビジネスと表現力の関連性に気づき、そこから独自の感動創造手法を開発したそうです。(オフィシャルサイトプロファイルより)その「GIFTの法則」の中で平野さんは様々な感動を生み出す方法などを話されるのですが、そのひとつがとても印象に残ったので紹介したいと思います。

Gift


現在顧客に商品やサービスを提供するうえで、そのほとんどの場合が「WIN-WIN(ウィンウィン)」という考え方が基本となっています。この「WIN-WINの関係」とは、その商品を購入する顧客も、その製品を提供する企業(人)も、それぞれがそれを購入・提供してよかったという、お互いが満足をする関係、つまりお互いが利益を得るということが原則となっているものです(一部そうなっていない業界もありますが…。)。

けれどもこのWIN-WIN(お互いが利益を売る)関係となるための方法を考えるにあたって経営やマーケティングの世界では、「戦略」とか「戦術」という言葉を用いているのです。一見どこもおかしくないように思えるかもしれませんが、「戦略」とか「戦術」とは、「戦(いくさ)」という文字が使われているように、戦争用語なのです。平野さんは、戦争(用語)は勝ち負けを決めるのものであって、これらの言葉をお互いが利益を得て満足するWIN-WINの関係に使うのはいかがなもかというのです。

マネジメント(経営学)の世界では、「経営戦略」や「マーケティング戦略」、あるいは「戦術」と言うことが現在も当たり前のように使われています。大学の先生はもちろんのこと、コンサルタントの人や会計士、あるいは社労士の人なども使っています。小さなお店を経営している人で、少しでも経営の知識のある人ならば、やはり当然のように「戦略」と言う言葉を使っていると思います。そのくらい当たり前に使われている言葉です。

Photo_20


ではそれをどうするかと言うと、顧客が幸せになること、感動することに焦点を絞り、戦争用語を使うのをやめましょうと説くのです。具体的には「戦略」を「シナリオ(脚本)」という言葉に、「戦術」を「プロデュース(演出)」、そして「戦闘力」を「パフォーマンス(振る舞い)」という言葉に変えましょうと提案しているのです。

考えてみれば、企業が利益を得ることだけの時代(WIN-LOSEの時代)ならば、勝つために戦略を練り、(企業の持つ)戦闘力を考慮し、戦術を用いるというのでもよかったのかもしれません。けれども今や様々な業界で、「WIN-WINの関係」、あるいは「ホスピタリティ」が叫ばれている時代です。そんな時にホスピタリティ戦略=「真心(幸せ)」と「戦争(用語)」並べられているのは確かに変です。

戦争とは多くの人々を不幸にするものです。イラク戦争にアフガニスタンへの侵攻、中東情勢とヨーロッパ諸国に押し寄せる難民。一体誰が幸せになったかということを考えてみれば、大笑いしたのは武器商人と一部の利権者・権力者のみです。両国のほとんどの国民は、逃げたり、怯えたりの日々です。家を失ったり人、家族・親族などを失った人も多いでしょう。そこにあるのは悲しみと涙でしかなく、誰も幸せにはしないものです。

Photo_21


更に言うならば、現在「WIN-WINの関係」から更に発展し、「三方よしの」時代へと変わりつつあります。WIN-WINの関係とは、売り手と買い手の両方よしというものでしたが、三方よしとは、元々は近江商人の言葉なのですが、「売り手よし、買い手よし、世間よし」と言うことで、「世間よし」が加わっているものです。この考えは、売り手と買い手、その両者だけが満足するのではなく、その商品(サービス)を通じて、世の中もよくなるようにしようとするものです。

人々(顧客)に感動を与え喜んでもらうのは当然のこととして、更にその商品やサービスを通じて世間をもよくしていくこと。そのシナリオ(脚本)を描き、それを演出(プロデュース)すること。そしてそのためのパフォーマンス(振る舞い)を行うこと。確かにみんなを良くしていこうとするものに戦争用語は合いません。戦争用語使用反対、納得です!

Photo_22


さて福祉の世界で語るならば、現在世の中には、(社会の中で、あるいは人生で)躓いてしまった人がたくさんいます。僕が最近気になっているのは、貧困のために学ぶ機会や働く機会を失った若い人達、あるいは親や祖父母の介護のために同じく学ぶ機会や働く機会を失った若い人達。本人が悪いわけでもないのに第三的要因で機会を奪われてしまっている若い人達。世の中にはそんな若い人たちが大勢いるそうです。本来ならば平等にそれらの機会は与えられるべきものなのですが、現在のこの国のシステムではそうはいかないようです。そのためこの人達が少しでも喜んでもらえる、幸せになるためのシナリオを描けないものかと思案しています。(ただ現在は障がい者支援のことで手一杯…。)

Photo_23


福祉とは人々を幸せにするもの。人々に神様の恵みを留める仕事です。けれども社会にはその神様の恵みを受け取れず要る人、チャンスを逃して通過してしまった人々が沢山いるのです。そんな躓いてしまった人々に、手を差し伸べ、彼らを起こしてあげて、そして神様の恵みが留まるようにお手伝いするためのシナリオを描けたらなと思うのです。

そんな仕事のシナリオを描くのに、「戦略」とか「戦術」などという言葉は似合いません。彼らの幸せのためにどのようなシナリオを描き、プロデュースし、そしてどうパフォーマンスするかを考えていきたいものです。





 





らいふあーと21~僕らは地球のお世話係~