私は見た!とある施設のあるフロアで生活するおばあちゃまの様子をご紹介。

 遅番出勤の最初の仕事は10時の水分補給がまだ終わっていない人を介助すること。エプロンをつけてスッタッフルームから出た僕は、スッタッフルーム前で黄色い車いすに乗り、顎をテーブルの上に載せて目を閉じている善福清子さん(仮名)が最初に目に入って来た。善福さんのすぐそばには、カップに入った牛乳が置いてある。「善福さ~ん。おはようございます。牛乳飲みませんか?」と声をかける。が、反応なし。いつもの得意のワザ。再度肩をトントンと叩いて声をかけるが、同じく反応なし。仕方がないので善福さんは後回しにし、居室に入り、まだ水分補給の終わっていない人の介助をする。

 みんなの水分介助を終え、再びスタッフルームの前に戻ると、依然善福清子さんは目を閉じている。もう一度肩をトントンと軽く叩き、「牛乳ですよ。」とカップを善福さんの手元まで持っていくと、「うるさいんだよ!」とカップを握り、そのまま後ろに投げつけてきた。お陰で僕は牛乳をかぶった。それを見て善福さんは、「フッフッフ~。」と笑っている。


 新しい職員さんが入ってきた。ある昼食時、食後の口腔ケアをお願いした。入居者を居室に誘導し、洗面台で歯磨きをしてもらったり、入れ歯を洗ったりする仕事。職員はそれぞれ食事介助、ベッドへの臥床等業務を役割分担して行う。その職員さんは何度か他の職員と一緒に口腔ケアをしてもらっていたので、今度はひとりでの口腔ケアの実践。

 しばらくすると新人職員さんが食堂へ戻って来た。見ると左手には歯の欠けた義歯、そして右手は指先から血が流れている。善福清子さんの口腔ケアをしようとしたところ、口をぐっと閉じられ、義歯が取れない、取れないと焦った結果そのようになってしまったとのこと。善福清子さんはそれを見て「ウシッシッシシ~。」やりやがった…。


 排泄介助の時間、善福清子さんをトイレ誘導する。ひとりが善福さんを立たせ、もう一人がズボンとパンツを下す。そのあと善福さんはひとりで動き出す可能性があるので、ひとりがトイレについている。

 しばらくはトイレの外で時々様子を伺いながら待っていたのだが、しばらくすると善福さんは背中に手をやり何やらもぞもぞし始めた。僕はトイレの中に入り、善福さんに声をかける。「善福さん。背中痒いのですか?トイレ終わりました?」。しかし善福さんは何も言わず、手を背中の方にやったままモゾモゾしている。普通トイレを排尿したら音でわかるのだが、その音も聞こえていない。そのため、再度「善福さん、トイレ終わりました?」と声をかけると、背中のほうにあった手が、戻され僕の腕の所へやって来た。なんと善福さんの手にはう○こがついており、それを僕の腕にこすり付けやがった!そして善福さんは「ウッシッシシ~」と大笑い。

 「クソババア~。なんちゅうことすんねん。絞めたろか!」と心の中では思いながらも、そこは少々柔らかく、しかし顔をひきつらせながら「何するねん善福さん!」。(ザ・ガマン!)

 善福清子。その施設でのやりやがった歴を披露すれば切りがない。一度は死にかけたにもかかわらず、死神に嫌われ見事復活し、常食(普通のごはん)をバリバリたべていた婆さん。僕が彼女と出会ったのはもう10年近く前のことであり、今も生きているかどうか定かではない。しかし数々の悪行三昧のネタは生き続け、現在も語り続けられているに違いない。




らいふあーと21~僕らは地球のお世話係~