カムヤマトイワレビコは日本に渡り次々と武力でもってその一帯を制圧していきました。彼にとって力(武力)こそが正義であり、剣こそが彼の唯一の頼りとするものでした。彼の体の中には長年流浪の民としてさ迷い続け、時に虐げられてきた、民族の血が流れており、彼の身体には無数の傷跡があり、その一つひとつが彼のこれまでの戦闘を物語っているのでした。同時にその傷一つひとつが彼の想いを熱くさせてきたのでした。


東の果てのその向こうにある日出ずる地で国を治めよ。そこで我らの旅は終わる。


わが父が、わが祖父、そしてわが先祖が常に唱えてきた言葉。我らは神の民。彼がまだ小さな子供のころ祖父は彼の目の前で殺され、父も旅の途中で息絶え…、時には一族ごくわずかの人数となった時もありました。それでもその言葉に支えられながら彼らは旅を続け、さまざまな屈辱にも耐えてきたのです。わずかばかりの食料でもって幾日もしのいだこともありました。また子供のころ他の民族の同年代の子から投げつけられた言葉と暴力を思い出すと今でも心が痛みます。けれども我が背中に託された一族と誇り。そして預言の成就。それでもって彼は今日まで生き延び、そして遂にこの地へとたどり着いたのでした。


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しかしながら彼は最初この地に着き、しばらくすると当惑しました。なぜならそこにいた者たちは言葉のすみずみに同じ響きがあり、ほぼ同じ意味を持っていたのでした。また彼らは同じような習慣を持っていたのでした。小さな村々は水田を営み、その村の外れには祠があり、そこで人々は彼の一族と同じようなしきたりが行われていたのでした。


彼はまだ幼き頃に祖父からわが支族は10支族の中の一支族であるという伝説を聞いたことがありました。しかしながら彼らの国が他民族に滅ばされ、それぞれが離散し消えていったことまでは聞いていましたが、まさかこの地に彼らが先に来ていたとは夢にも思いませんでした。しかも彼と同じように陸伝いに来た一族もいれば、海伝いにやってきた一族もいるようです。
 


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しかし先にこの地に来た者たちは明らかに彼とは違うところもありました。彼らは概して穏やかなのです。彼がこれまで歩いてきた大陸の文化と同じようなものが見受けられつつも、人々はどこか大陸とは違った穏やかさを持っているのです。それはこれまでの彼の境遇や生き方とは全く違う不思議なものでした。それに彼は一瞬拍子抜けさせられたのでした。


しかしながら彼は改めて祖父、父が語り続けていた言葉が頭の中に蘇りました。「国を治めよ、我らは神の民、選ばれしガト族。千年王国を築きあげよ。」その言葉とともに旅を続け、その途中で死んでいったわが祖先たち。そこで彼は改めて気を引き締め剣を握りしめ、村の代表として出てきたものの首を斬りおとしたのでした。そして村々の者に服従を要求し、それに従わなければ容赦なく斬りつけ、時には住民全員を殺害し村自体を滅ぼしたのでした。そうして彼はその地域を制定したのでした。


さてこの地は人々が概して穏やかであるだけでなく、日出ずる地であるだけに風土も穏やかでした。季節は四季折々に移ろい、大陸とは全く違った穏やかさがありました。そして制圧した村々も大陸に比べるとずっと穏やかでした。しかし彼は制圧したこの地は西の一端にすぎないことが分かっていました。そこで再びあの言葉が浮かびあがります。「この地を治めよ。千年王国を築きあげよ。」そこで彼は再び立ち上がり更に東へと向かうことにしたのでした。


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内海の波は穏やかです。彼はこれまでの日々を思い出しながらも、この地で新たな国をつくり統治すること夢見ます。兄の船は夕日と重なり併走しています。父を亡くしてから兄と一緒に一族を守るために戦ってきました。兄は剣を杖にして船の先頭に立ち海を眺めているようです。その姿は影となり夕陽に溶け込んでいくように思えました。このとき彼は兄が間もなくいなくなってしまうことなど知る由もなかったのでした。




らいふあーと21~僕らは地球のお世話係~